DXシナリオ「So sweet days」

ダブルクロス The 2nd Edition
シナリオ「So Sweet days」

■!注意
 本編は『ダブルクロス The 2nd Edition』のシナリオである。プレイヤーは読まないこと。
 文中の(『DX2』P*)は『ダブルクロス The 2nd Edition』の、(『BU』P*)なら『ブレイクアップ』の、(『AL』P*)なら『アルターライン』の、(『CS』P*)なら『コントラストサイド』のページを示している。

●シナリオスペック
▼プレイ時間
2、3時間
▼プレイ人数
3〜5人
▼ステージ
東京近郊S市

●その他
 文中にPC①とあった場合は、対象となるPCの名前を意味する。GMはプレイヤーが付けた名前に置き換えること。また、文中で示されるシーン情報の記述式は次の通りである。

①「●シーン名」
②「◆描写」
③「◆解説」
④「◆セリフ」
⑤「◆結末」

 ①は演出するシーンの名称。②はシーンの描写が入る。そのシーンがはじまったら、GMは②の文章を読み上げること。③には、そのシーンに関する全体的な情報が記述されている。演出の参考にすること。また、④はNPCのセリフである。PCの反応に応じてセリフを変更すること。⑤はシーンの結末にGMが読み上げる描写である。

■プリプレイ
●ストーリー

 オーヴァードこそ、神に選ばれた新たなる人類であるという妄想に取り付かれた天才がいた。その名を芹沢礼司。芹沢は人類は全てオーヴァードとなるべきであり、それこそ高貴な身に生まれた自分の使命であると狂気を加速させていく。
 芹沢はその優れた頭脳とFHの研究データを活用し、「他人のレネゲイドウィルスを活性化させる」オーヴァードを作り上げた。それが、UGNのエージェントであり、任務に失敗しFHに捕らえられた少女、高梨可奈である。
 しかし、その力は芹沢の目標である「一都市全体の住民をオーヴァード化」までには程遠かった。そこで目を付けたのがレネゲイド能力を爆発的に増大させる「レネゲイドクリスタル」に芹沢は目をつける。
 彼はUGNに所属する、可奈の兄である高梨雄介に『妹・可奈を取り戻したくないか』という交渉を持ちかけ、本来はUGN日本支部に搬送される予定であった"レネゲイドクリスタル"を自分の力の及ぶS市に運ばせることに成功する。
 このセッションは芹沢を止めることが出来れば終了となる。
 

●クイックスタート
PC①:不確定の切り札(『DX』P58)
PC②:魔術師の仮面 (『DX』P70)
PC③:完全なる使徒 (『DX』P66)
PC④:錆びついた刃 (『DX』P74)
PC⑤:幻の造り手  (『DX』P72)

フルスクラッチ
▼カヴァー&ワークスの指定

 カヴァー、ワークスの指定は以下の通り。
PC①:高校生/なし
PC②:なし/エージェント
PC③:なし/UGN支部
PC④:なし/なし
PC⑤:記者/なし

●シナリオ情報技能
 全PCにはシナリオ情報技能として<情報:S市>1レベルを渡すこと。

●PC間ロイス
 キャラクターの作成が終わった時点で各プレイヤーにPC紹介を行わせること。その後、PC間ロイスを結ばせて、メインプレイに移ること。ロイスはPC番号順にとる。つまり、PC①→PC②→PC③→PC④→PC⑤→PC①という順番である。

シナリオハンドアウト
各PCには以下の設定がつくので、キャラクター作成の時によくプレイヤーと相談すること。
PC①:雨の日に出会った少女に好意を持つ。少年を推奨。
PC②:かつて高梨雄介と友人であった。
PC③:S市に派遣される支部
PC④:レネゲイドクリスタルの護衛任務に就く
PC⑤:新聞社から派遣される。

PC①用ハンドアウト
ロイス:可奈 P:純愛/N:なし
クイックスタート:不確定の切り札(『DX』P58)
カヴァー/ワークス:高校生/なし
 あの酷い雨の中、君と彼女だけが今息絶えようとしていた子猫の為に歩みを止めた。そして看病の甲斐あって、猫が無事元気になったとき、自分の事のように喜んだのも彼女だった。あれから一度も会っていないが、あの純粋で健気な少女は今は何をしているのだろうか?
推奨Dロイス:生還者

PC②用ハンドアウト
ロイス:高梨雄介 P:友情/N:なし
クイックスタート:魔術師の仮面(『DX』P70)
カヴァー/ワークス:なし/UGエージェント
 S市に所属するキミはかつて、親友の高梨や、多くの腕利きオーヴァードとFHの施設への奇襲作戦に参加した。万全と言ってもよい体制、しかし大方の予想を裏切って、この作戦は失敗した。高梨の妹と多くのオーヴァードを犠牲にして。……あれから3年。あの後すぐ支部を抜けた高梨がこの街に帰って来ているらしい。……心の傷は癒えたのだろうか、心配だ。
推奨Dロイス:伝承者(<追跡>を選択することを推奨)

PC③用ハンドアウト
ロイス:白衣の男 P:なし/N:不快感
クイックスタート:完全なる使徒(『DX』P66)
カヴァー/ワークス:なし/UGN支部
 S市で起こる、一般人が突然ジャーム化するという奇妙な事件。ドラッグがその背後に関わっているという厄介な任務の最前線にキミがたたされる事が決定した。なんてめんどくさく、厄介な事件だ。しかもその近辺で賑わう白衣の男の目撃証言。キミは溜め息をつきながら、S市へと飛んだ。
推奨Dロイス:特権階級

PC④用ハンドアウト
ロイス:"ストレイ・ドッグ" 高梨雄介 P:感服/N:なし
クイックスタート:錆びついた刃(『DX』P74)
カヴァー/ワークス:なし/なし
 腕利きの何でも屋であるキミの元には様々な依頼が舞い込んでくる。今回の依頼人はUGN。払いもいいし、何より信用でできる。しかし、今回の任務は何処か違和感を感じるものだった。"レネゲイドクリスタル"の運搬、それはいい。しかし、このFHの襲撃の数はなんなのだ! 予想しているよりもはるかにハードなこの仕事、たっぷり追加報酬をふんだくってやろう。
推奨Dロイス:秘密兵器

PC⑤用ハンドアウト
ロイス:S市の失踪者 P:好奇心/N:なし
クイックスタート:幻の造り手(『DX』P72)
カヴァー/ワークス:記者/なし
 事件を調査し、過激にラッピングして記事に仕立て上げる。記者であるキミの仕事だ。今回のネタはS市の連続失踪事件。
さて、今回はどんな風に仕上げるか……。そんな算段を立てていたが、どうやらこの事件の裏にはオーヴァードが絡んでいるようだ。……なんて面白そうになってきたんだ!
推奨Dロイス:対抗種

■オープニングフェイズ

●シーン1:濡れる宝石
(シーンプレイヤー:PC④、いない場合はマスターシーン)
◆描写
 君がこの任務についてから、FHからの襲撃はもう両腕の指では数えることが出来ない。
 レネゲイドクリスタル。
 どうやらFHもレネゲイドウィルスであるこの結晶に、オーヴァード数十人以上の価値があると見ているようだな。そう考えたのは、レネゲイドクリスタルが収められているコンテナに手をかけようとしたオーヴァードを地に伏せさせた時だった。
◆解説
 FHによって日本支部へ運ばれる予定だったレネゲイドクリスタルが襲撃される。FHのエージェントはすべてエキストラである。
 もしPC4がいない場合はマスターシーンに変更すること。描写、セリフにおかしくなる部分があるのでGMはその時々に応じて修正すること。
▼セリフ:“ストレイ・ドッグ”高梨雄介
「おお、そっちはどうだ? 無事だったか?」
「(レネゲイドクリスタルに目を向け)……どうやら、FHとしてもコイツの価値はわかってるようだな」
「しかし、今のでコッチの戦力もガタガタだな。近くの支部に避難して、援軍を要請するか……」
「ここから一番近いというと……。S市、だな……」
「よし。(部下のエージェントたちに向けて)すぐに用意を整えろ! S市に着いたらやわらかいベットが待ってるぞ」
◆結末
 ふと、何かに呼ばれた気がし振り返った。
 そこには、何か飢えた獣のような獰猛しい光を放ち続ける結晶があった……。

●シーン2:暗雲
(シーンプレイヤー:PC③)
◆描写
 UGN日本支部。今、君の目の前には呼び出した張本人である日本支部長、霧谷雄吾がゆったりと椅子に腰掛けている。
「実は、あなたにお願いしたい仕事があるのですが」
◆解説
 霧谷よりジャーム化事件を解決するべく、支部長としてS市に派遣される。
▼セリフ:霧谷雄吾
「あなたもS市で起こる謎のジャーム化事件について耳にしていると思います」
「現場ではあやしげな男と少女の目撃が報告されているのですが……。(肩を竦めながら)男の姿は、白衣だという事です」
「この事件の追っていたS市の支部長もジャーム化。その始末の際に支部のエージェントの半数近くが戦闘不能
「ひどい有様です。もう支部として効果的に機能しているとは言えませんね」
「そこであなたに支部長として、S市に行ってもらいたいのです」
◆結末
「大変危険な任務ですが、あなたならうまくやるでしょう。よろしくお願いしますよ」
 そして、君は霧谷の命を受けS市に飛んだ。

●シーン3:スクープ!
(シーンプレイヤー:PC⑤)
◆描写
 あなたが事務所に入ると、なにやら社長兼編集長を勤める奥村英之が興奮してる。
 嫌な予感がするが……。
◆解説
奥村がPC5をS市に派遣する。
▼セリフ:奥村英之(おくむら・ひでゆき)
「かっー! コイツはスゲエネタになってきたぞ、オイ!」
「えぇ、“S市、11人目の被害者! 犯人は白衣の男!?”。こんなにも大衆の目を引く記事は早々ないぞ!」
「……なあ、PC5? 確かお前、今何も担当記事無かったよな?」
「よし、今からS市に行け。グリーン車載ってもいいぞ、経費で落としてやる!」
◆結末
 奥村に言われるがままにあなたはS市に向かった。

●シーン4:Sweet days / Rainy street,rainy cat.
(シーンプレイヤー:PC①、他のPCは登場不可)
◆描写
 突然の雨。
 まったく、朝の天気予報ほどあてにならないものはないな。
 そうやって急いで家に帰ろうとする君の前に、原色で彩られたカラフルな傘をさす少女がしゃがみこみながら何かを見ている。ダンボールの箱と、そしてその箱の中で苦しそうに鳴いている子猫。どうやら捨て猫のようだが……。
◆解説
可奈とPC1が初めて出会うシーン。猫についてPLに質問されたなら「すぐに治療しなければいけないようだ」と答え、近くに動物病院があるなど猫を助けるように誘導すること。
▼セリフ:可奈
「……どうしよう。こんなにも弱ってる……」
「(声をかけられ)え? この猫さん、弱ってて……。こんなにも身体が冷えちゃって……」
「(猫の鳴き声が段々とか細くなっていく)……どうしよう! 猫さん!? 猫さん!?」
「(PLがなんらかの手段で猫を助ける)……よかった」
「ありがとう! ホントにありがとう!(PC1の手をぎゅっと握る)」
「あっ!? ……ゴ、ゴ、ゴ、ゴメン!!(赤面しつつ)」
「え、えーと、そうだ! じ、自己紹介もまだだったよね!」
「わたしは可奈。あなたは?」
「(猫を両腕で抱きつつ)今日は本当にありがとう! また、会えるといいね!!」
◆結末
 彼女が去って、雲の切れ間から光が射す。アスファルトを濡らした水はもう乾き始めている。
 そんな中、君は彼女に握られた手をずっと見続けていた。

●シーン5:嵐
(シーンプレイヤー:PC②)
◆描写
 FHの研究施設制圧作戦。
 嵐の中、君を含む主力部隊は、施設に潜り込んだ先発部隊からの連絡を待っていた。
 そんな中、隣から声を掛ける男がいた。
 高梨雄介。同じ支部に所属し、幾度となく同じ戦場を駆け抜けた戦友である。
◆解説
過去のシーンである。PLにもよくその旨を伝えること。高梨と会話の後、作戦が失敗したことが告げられる。
▼セリフ:高梨雄介
「……よう。お前も参加いているとはな」
「しかし、スゴイ面子だぜ? “スカーレット・ビースト”、“プリズム・プリズン”*1……」
「それに、お前とオレ。……まったく豪華なことだろ、え?」
「(急に態度を変え)……実はな。先発隊にオレの妹がいるんだ」
「……親を亡くしてから、オレはアイツを食わせる為にUGNに入った。親のいない子、と不憫な目に合わせたくない一身でガムシャラに働いたさ」
「……でも、それがよくなかったのかも知れないな。気づけばろくに家に帰ってなかった」
「……オレはアイツに……自分を、こんなに汚れちまったオレを……見せたくなかったのかもな」
「何不自由なく育てたつもりだったんだけどなぁ。……たくっ、いつの間にか“コッチ”の世界に入り込んじまった」
「……何ともなければいい、そう思わずにいられない。くそっ、オレらしくもない」
「……くそっ、嫌な雨だ! (突然立ち上がり、陽気な口調で)よし、この任務が終わったらオレは海にいくぞ! 海に!」
「のびきったラーメンとか、コゲついたやきそばとかをよ……腹いっぱい食って。水着の女の尻、追いかけてよ……。そして、そんなオレに可奈がキレるわけだ……。ははは、考えただけで愉快じゃねぇか、PC2、お前も来いよ。ぜってぇ、楽しいぞ……
▼セリフ:上司
「(急に現れ)先発隊の進入がばれた。作戦は失敗だ。今すぐこの場からの撤収を開始する」
◆結末
「……なっ!?」
 苦悶の表情を浮かべる高梨の顔を君は忘れることが出来ない。UGNはすぐにこの作戦を闇に葬りさり、高梨の妹の行方も知れない。それからすぐ、高梨は支部を去った。
 その彼から、「久しぶりにあわないか?」という連絡があった。どうやらこの街に帰ってきているらしい。
 キミは待ち合わせの場所に急いだ。

■ミドルフェイズ
●シーン6:白い死神
(シーンプレイヤー:PC3)
◆描写
 獣の咆哮のような、甲高い音がキミの耳に響いたと同時に周囲一面から音が消える。
 《ワーディング》、オーヴァードのみが使うことの出来る超常能力。
 何があったのかと、その中心地に向かうと、人と獣を悪趣味にぜ込んだような化物。そんな異常な光景をまるで意に解さぬように、慇懃な様子で佇む白衣の男の姿、そしてその脇にまるで人形のように控える少女の姿があった。
◆解説
 PC3が可奈と芹沢に出会うシーン。このシーン中、可奈は芹沢に操られているため、一言も発しない。ジャームはエキストラとして扱うこと。
▼セリフ:白衣の男(芹沢礼司)
「・・・・・・どうやら、失敗のようだな? ふん、所詮は平民。私のように選ばれたものとは違う、か・・・・・・」
「ふん、汚らわしい・・・・・・。ゴミをかたずけるのも高貴なるものの義務か・・・・・・」
「くだけちれ!(ジャームに向かい、複数の砂の槍が飛びかかりその体を貫く)」
「(PC2に気づくと)何者だっ!?」
「ちっ、UGNの犬か!!」
「くっ、じゃまな支部長を片付けたと思えば! しつこいヤツらめ!」
「まあいい、今回で実験は終了だ。行くぞ可奈!!(<砂隠れ>を使用。シーンから退場する)」
▼セリフ:少女(可奈)
「・・・・・・」
▼セリフ:ジャーム
「ぐぉぉぉぉ!」
「(芹沢の攻撃を受け)ぎゃぼぁぁぁぁ!?(貫かれた箇所から、身体が砂となって崩れ落ちる)」
◆結末
「もうすぐだ……。もう誰にも私の理想を止めることは出来ん! 神であったとしてもだっ!」
 去り際、男はそう呟いた。

●シーン7:Sweet days / 再会 〜たとえばこんな恋の育み方〜
(シーンプレイヤー:PC1)
◆描写
 まるで、彼女と出会った時のような夕立。
 まさか、と思いながらも君の足は彼女と出会ったあの路地へと向いていた。
◆解説
 可奈との再会の場面。他のPCは登場不可。シーン終了時に『可奈』がPC1のロイスを取得することを明言すること。
 *2
▼セリフ:可奈
「(両手で猫を抱きながら器用に傘を差しながら)あれ? ……PC1くんだよね」
「……ホントに会えるとは思ってなかったよ。……もしかしてコレって運命? (顔を赤らめて)な、な、なんてね!?」
「と、ところでさ!! (猫を両手で上に掲げる)ねえ、この子見て! こんなに元気になったんだよ!」
「うん。……本当にありがとう。君のおかげだよ……」
「(PC1が立ち去ろうとすると)あっ!! ……あ、あ、あのね? これから、い、い、一緒に何処か行かない!? ホ、ホホ、ほら!? こ、この子のこともあるしさ。……そ、そうだ、お礼をさせてよ!! ね、ね?」
▼セリフ:子猫
「にゃー」
◆結末
 彼女に引っ張れるまま、君たちは街の方へと足を進めた。

●シーン8:再会 〜過去との遭遇戦〜
(シーンプレイヤー:PC3)
◆描写
 君は高梨雄介に呼び出され、あの頃よく二人で通った喫茶店にいた。
 彼がこの街を去ってから一度も通っていなかった店。マスターの顔、グラスの配置、席の位置、まるでここだけは時間が過ぎていないような、そんな妄想にとらわれる。
 しかし何一つ変わりのないメニューの隅の、あの頃にはなかった黄ばみが、そんな妄想を振り払った。
 数分して、カランカラン、とドアが開いた音。
 そこにはあの頃より引き締まった顔つきの高梨がいた。
◆解説
 高梨とPC3との再会のシーン。PC4が登場している場合はそれに応じて演出を変えること。*3
▼セリフ:高梨雄介
「……待ったか?」
「……あの頃と、全く変わっていないな。まるで、時間が過ぎていないみたいだ」
「ひさしぶり、だな。あれから……3年か……」
「オレか? オレはあの後、UGNの特殊作戦部隊に移った……まるで地獄のようだったよ」
「でも、でもな……なにも考えなくて済んだんだ。いや、無駄なことを考える暇もなかったが正しいか……」
「……ここの支部長、死んだんだってな」
「まったく、みんなオレを置いて勝手に行ってしまう。知ってるか? あの時作戦に参加していた人間で生きているのは俺とお前だけだってさ……」
「ああ、ここの支部から援軍を頼もうと思って来たんだが……どうやら無理みたいだな」
「しばらくはここで足止めさ。本部からの応援が来ないことにはな……」
「まったく……嫌な雨だ。……そういえば、あの日もこんな雨が降っていたな……。(窓の外を見る)……!?」
「すまん、用事ができた。今度はゆっくりと昔話でもしよう(レシートを持って立ち上がる)」
◆結末
 すぐに高梨は街の雑踏の中に消えていった。あの焦り様、どうやらなにかを見つけたようだが……。

●シーン9:Sweet days / 別れ
(シーンプレイヤー:PC1)
◆描写1
 街の中、君たち二人は色々な場所を巡りまわった。
 ショッピング・モール、駅前の露店の安っぽいアクセサリー、噂のアイスクリーム、新作の映画……。
 君が意外に思ったのは、彼女がそういった情報を全く知らなかったことだ。それとなく訪ねて見ると「私、最近こっちに来たから……」と言う。しかし、何故かPC1の知らない道も知っているなど街の通りなどには詳しかった。
 雨も止み、もう太陽が落ちる頃。突然、彼女が「コッチだよ!」と言い、そのあとについていくと、そこは街全体を眺められる、そんな公園があった。
 そして、今まさに沈もうという夕日が街を真っ赤に照らしだしていた。
◆解説
 彼女とPC1が親睦を深めるシーン。
▼セリフ:可奈
「はぁはぁ……間に合ってよかった〜!」
「綺麗でしょ? 私とおにいちゃんだけの秘密の場所なの!」
「喜んでもらってよかった……」
「(兄について聞かれると)今は仕事が忙しくて、あんまり会えないの。……なにかと文句を言ってきたり、上からものを言ったり、お風呂は嫌いだったりでさ。ホントさいてぇぇぇぇ! な、おにいちゃんなの!!」
「だけど……そういうところ、ホントに私を大事に思ってくれてるからなんだけどね(照れながら微笑む)」
◆描写2
 君たちが夕日を眺めていると、そこに一人の男が「カツカツ」と踵を鳴らして近づいてくる。白衣をはためかせながら、高圧的な態度で。
◆解説
 可奈が芹沢に連れて行かれる。この後、二人はクライマックスまで登場しない。
 他のPCが登場しているならば、<ナーブジャック>の対象を<要の陣形>で増やす。
 PC1が<ナーブジャック>の判定に失敗したなら「<ナーブジャック>によってPC1の意識は途切れた」と言ってシーンを終了すること。もしも判定に成功したなら、PC1のタイタスを使用し達成値を上昇させよ。それでも成功する場合は<砂隠れ>を芹沢が使用する。
▼セリフ:芹沢と可奈
「ふふふ、青春しているじゃないか、少年? それに可奈?」
「せ、芹沢先生!?」
「探したよ。まったく黙って研究所をでるなんて……悪い子になったもんだね、ん?」
「そ、そんな。私は、ただ……」
「最近、わがままが過ぎると思えば……こういうわけだったわけだったわけだね? ん?」
「どうやら悪い虫がついたようだ(PC1を見る)。ふう、少年? 君は本当に運が悪いね……」
「……だめです、博士!? 止めてください!!」
「ん? あの猫だけでは我慢できないというのかい? ああ、なんて悪い子だ!?」
「そんな悪い子では……お兄さんに会わせてあげるわけにはいかないなぁ? ああ?」
「えっ!? そ、そんな……」
「だったら、早くその少年を排除したまえ!? 私をいつまでこのような汚らわしい場所に留めるつもりだ!!」
「…………ごめんね、PC1くん……(<ナーブジャック>使用)」
◆結末
「…………私のことは忘れて。……お願い」
 徐々に雨音が大きくなってゆく中、倒れ付した君の頬を暖かい一粒の雨が伝う。沈み行く意識の中、彼女の泣き顔が見えた気がした。

■情報収集
 シーン9が終了すると、今回の事件について調べるシーンが開始される。プレイヤーに調べられる情報項目をすべて提示すること。最初から調べることの出来る情報項目は以下の4つである。
・▼可奈という少女
・▼白衣の男
・▼ジャーム化事件
・▼高梨雄介
 シーンプレイヤーを決定し、調べたい情報項目、舞台となる場所などが決定したなら、シーンの演出を開始すること。ここで各プレイヤーの合流、情報交換を促すといい。
 また以下の2つの情報項目は他の対応した情報項目が調べられた後から調べることが出来るようになる。GMは注意すること。
・▼芹沢礼司について
・▼高梨雄介について*4
 すべての情報項目が調べられたなら「■トリガーイベント:●襲撃」に移ること。

▼可奈という少女
(スポット:繁華街)
<情報:噂話、S市、警察> 難易度:8
・PC1と共に行動していた少女。年齢は16歳前後と思われる。
・学校など教育機関のデータベース中には該当する生徒はいない。
・3年前、UGNの作戦行動中に行方知れずとなった少女、高梨可奈に酷似している。

▼白衣の男
(スポット:高級住宅地)
<情報:噂話、裏社会、S市> 難易度:8
・その背格好から、この街の名家・芹沢家の家長、芹沢礼司のことだと思われる。
・かつて、国際環境情報大学遺伝子工学科を主席で卒業するなど優秀な成績を残すが、突如渡米。
・FHとの関係などを噂されるが真相は謎。彼の実家は周辺住民から“芹沢屋敷”と呼ばれるほど広大な敷地を誇る。
→この情報について調べたなら「情報項目:▼芹沢礼司」を調べることが出来るようになる。

▼ジャーム化事件
(スポット:繁華街)
<情報:UGN、警察、S市> 難易度:12
・一般人、オーヴァード無差別にジャームする事件。
・ジャーム化した人々の体内からは尋常ではない量のレネゲイドウィルスの急激な活性化が見られている。
・事件現場の近くで白衣の男と、それに従うように歩く少女の姿が見られている。

▼高梨雄介
(スポット:S市支部
<情報:UGN、S市、裏社会> 難易度:8
・UGNでも屈指の腕を誇るエージェント。コードネームは“ストレイ・ドッグ”。
・現在はレネゲイドクリスタルの搬送任務に従事し、S市に逗留する。
・かつて、オーヴァードである妹をUGNの任務で亡くす。
→この情報について調べたなら<FHDロイス:追跡者>が使用される。情報収集マップに<高梨雄介>を追加すること。

▼芹沢礼司について
(スポット:S市支部
<情報:FH、裏社会> 難易度:15
・FHの研究者。オーヴァードこそ選ばれた存在だと提唱する男。コードネームは"狂信者(ゼロテ)"
・オーヴァードを人為的に発生させるという実験に苦心する。
・どうやら実験は、可奈と呼ばれる実験体を持って、ほぼ成功といえるところまで来ているらしい。
・UGNに個人的なパイプも持っていると言われる。

▼高梨雄介について
(スポット:高梨雄介)
<追跡> 難易度:30
・UGNに潜伏するFHのエージェント。
・日本支部に搬入予定だったレネゲイドクリスタルをS市に送るよう、FHの研究者・芹沢礼司にその情報を流していた。

■トリガーイベント
●シーン10:襲撃
(シーンプレイヤー:PC3)
◆描写
 S市支部地下。最もこの支部で厳重な守りを誇る、その場所にレネゲイドクリスタルは収められていた。
 そして、そこにいくつもの人影。
 その中心に高梨雄介がいた。
◆解説
 高梨雄介との戦闘。高梨はFHエージェントの部下にレネゲイドクリスタルを渡し、自分はPC達の足止めをする。
 もし、PC3のみシーンに登場する場合、PCの強さでは勝てないとGMが判断するならPCのHPが[0]になった時点でシーンを終了すること。*5
▼セリフ:高梨
「……やはり来たか。PC3」
「ヤツは、芹沢はオレに言ったよ。『妹を取り戻したくはないか』と」
「FHによって捕らえられ、まるで家畜の様な……いや、それ以下の扱いを受けたアイツはもう前のアイツではなかった。それを、ヤツなら元に戻せるとな」
「アイツは、可奈はオレの命だった。理由はそれだけさ」
「(部下にレネゲイドクリスタルを渡し)行け、コイツらの足止めはオレがする」
「さて……お前達には悪いが。ここで死んでもらう。可奈の……いいや、オレ自身の為に!!」
(戦闘終了後)
「……ふ、オレ一人でどうにかなる相手じゃなかった、か」
「芹沢はオーヴァードこそ、人類の正当なる進化の形だと信じこんでいる狂信者だ。ヤツは人類全てをオーヴァードにしようとしている」
「可奈のワーディングは人のレネゲイドウィルスを活性化させる、そんな力を持っている。それをレネゲイドクリスタルで拡大する、そういう計画だ……」
「ヤツのアジトはあの馬鹿でかい屋敷さ。場所は分かるだろ? 『世界を変えるのは私だッ!!』なんて鼻息、荒かったぜ……?」
「まったく、嫌な雨だな……PC3? オレはこの任務が終わったら可奈を海に連れて行こうと思っているのによ、たくっ……」
「まったく……ああ、まったく嫌な雨だ……」
「ああ、可奈……そんなに泣くな……。オレがついている……だろ……」
◆結末
 泣いている時間はない。早く芹沢を止め、可奈を助けださなければ。

■クライマックスフェイズ
●シーン12:Sweet days / 決闘編
(シーンプレイヤー:PC1)
◆描写
 芹沢の屋敷の中庭。その広大な敷地の中心には、まるで教会の救世主の像のように十字架に吊るされている可奈の姿があった。
◆解説
 芹沢との戦闘シーン。可奈は≪異世界の因子≫によりコピーされた≪ナーブ・ジャック≫+≪融合≫によって芹沢に支配されている。なお、芹沢の使用する≪ナーブ・ジャック≫は特例として[効果:ただし、対象にエフェクトを使わせることはできない]の部分を適用しない。
 「●襲撃」において高梨雄介が死んでいない場合、可奈に対する攻撃に身代わりとなる。このシーンに登場する雄介はエキストラであり、その攻撃により死亡する。

さらに今回、このシーンでは以下のハウスルールを使用する。GMはPCたちに戦闘前に説明すること。

・[可奈を説得する](PC1のみ)
効果:メジャーアクションを使用することによって、可奈を説得することが出来る。これを使用した際、可奈に使用されている≪ナーブジャック≫に対して可奈に<意志>で抵抗を行わせる。この判定の目標値は18である。可奈の[精神]を判定に使用する。PC1にダイスを振らせるといいだろう。
 「●Sweet days / 別れ」において、可奈の持つ『PC1のロイス』が使用されていないならここで使用できることをPCたちに説明すること。

 この判定に成功したなら、可奈は自我を取り戻す。GMが望むならPCたちの援護をさせてもよい。
芹沢を倒すとこのシーンは終了となる。
▼セリフ:芹沢礼司
「今、世界は革変の時を迎える!! そう、一人の聖母と、一人の預言者の手によって!!」
「人類は、この古ぼけ穢れきった旧文明を捨て、新たなるステップに進む時が来たのだ!!」
「ふん!! 所詮は下賤のものよッ!! 私の……いや!! 朕の崇高なる使命を理解できんとは……」
「ふ、これこそ天が朕に与えた最後の試練かっ!? よろしい、ならば朕は貴様らを、古き人類の抜け殻を乗り越え、地上の民に永遠の平穏と絶対なる幸福、新たなる秩序を与えてみせようぞ!!」
(戦闘中)
「ふっははは!! 効かん、効かんわぁ!!」
「くっ、蛆虫どもめぇぇぇぇぇ!!」
▼セリフ:高梨可奈
(説得に成功したなら)
「…………聞こえたの、キミの、PC1君の声が」
「……ありがとう。本当にありがとう。……でも、今は(芹沢の方を見る)」
「さあ、PC1くん。狂気に捕らわれた、あの人を……解放してあげて……」
◆結末
「な、なぜだ……。この私を……天を見限ったと言うのか……」
 狂信者は最後まで神を信じた。

NPCデータ
NPCタイプ:ゲスト
コードネーム:"メサイヤ" 名前:芹沢礼司
セリフ:「ふっ……やはり下賤のものにはわからぬようだな……!!」
 狂気の天才。熱狂的なオーヴァード至上主義者。
 かつて、そのあまりにも凶暴な思想を持って学会を追放されFHにたどり着いた。自分の行なう実験のためにはいかなる犠牲もやむ終えないと考えており、それこそが正義であると信じ込んでいる。
 モルフェヌスの砂使いであり、GMは戦闘時の演出では『砂』を意識して行うといいだろう。
■DATA:
●シンドローム モルフェヌス/エグザイル
●コードネーム "狂信者(ゼロテ)"
●能力値
【肉体】3 <白兵>4
【感覚】2
【精神】7
【社会】5
【HP】:20(70) 【イニシアティブ】:11
●侵食値 150%(ダイスボーナス+6、エフェクトレベル+1)
●取得エフェクト
≪オールレンジ≫2、≪妖の招き≫3、≪貪欲なる拳≫2、≪自在槍≫3、≪融合≫3、≪異世界の因子≫2、≪砂隠れ≫2、≪ギガンティックモード≫3、≪ダブルモーフィング≫3、≪魂の練成≫3、≪ヴァイタル・アップ≫3
*レベルはすべて修正済みである。
●コンボデータ
≪オールレンジ≫+≪妖の招き≫+≪貪欲なる拳≫+≪自在槍≫+≪ギガンティックモード≫+≪ダブルモーフィング≫
解説:
 射撃攻撃扱いの範囲白兵攻撃を行う。<白兵>で判定し、ダイス13個、クリティカル値8、攻撃力+3。ダメージが通ったなら対象を自分のエンゲージに移動させる。セカンドアクションも行うが、この時も同じコンボを使用する。


NPCタイプ:ゲスト
コードネーム:"Rainy Cat" 名前:高梨可奈
セリフ:「……ゴメンね」
 芹沢礼司の実験体の少女。高梨雄介の妹である。
 かつてUGNに従っていたが、任務に失敗しFHに捕らえられる。
 実験の後遺症か、年齢が16歳で固定化され、3年前から姿形は変わっていない。
 PC1と恋に落ちる。
■DATA:
●シンドローム オルクス/ソラリス
●コードネーム "Rainy Cat" 高梨可奈
●能力値
【肉体】1 
【感覚】3
【精神】5 <RC>4
【社会】4
【HP】:12(32) 【イニシアティブ】:11
●侵食値 120%(ダイスボーナス+5、エフェクトレベル+1)
●取得エフェクト
≪狂戦士≫3、≪ヨモツヘグリ≫3、≪ファクトリー≫2、≪苦痛の矢≫3、≪ナーブジャック≫3、≪要の陣形≫3、≪縛鎖≫2
*レベルはすべて修正済みである。
●コンボデータ
≪ヨモツヘグリ≫+≪ファクトリー≫+≪苦痛の矢≫+≪要の陣形≫+≪縛鎖≫
解説:
対象4体に向けてRC攻撃。<RC>で判定し、ダイス9個、クリティカル8、ダメージ無し。判定に失敗すると、クリティカル[+1]、[全力移動][戦闘移動]不能、2D10侵食値を上昇させる。最初のラウンドでは<Dロイス:賢者の石>を使用し、クリティカルは6までさがる。


NPCタイプ:ゲスト
コードネーム:"Stray Dog" 名前:高梨雄介
セリフ:「……まったく嫌な雨だ」
 芹沢に利用されたUGNエージェント。FHのスパイである。
 妹のことを第一に考え行動をする。
 その刀ですべてのものを断ち切ってきた現代の剣豪である。
■DATA:
●シンドローム モルフェヌス/バロール
●コードネーム "Stray Dog" 高梨雄介
●能力値
【肉体】5 <白兵>5
【感覚】5
【精神】5
【社会】2
【HP】:20 【イニシアティブ】:15
●侵食値 100%(ダイスボーナス+4、エフェクトレベル+1)
●取得エフェクト
≪クリスタライザ≫3、≪巨神の斧≫3、≪魔王の理≫2
*レベルはすべて修正済みである。
●コンボデータ
≪レインフォース≫+≪クリスタライザ≫+≪巨神の斧≫+≪魔王の理≫
解説:
 単体に対して白兵攻撃。<白兵>で判定し、ダイス7個、クリティカル8、ダメージ+21、装甲値無視。
 攻撃に対しては[受け]を行い、防御力は+4/+5。
 <Dロイス:秘密兵器(フォールン・ブレイド)>、<FHDロイス:追跡者>を持つ。

■エンディング&アフタープレイ
●シーン13:決断
(シーンプレイヤー:PC3)
◆解説
 PC3のエンディングである。PC3はS市の支部支部長として残ることが出来る。
 プレイヤーにそのことを提示し、その決断を聞いた上でエンディングを演出すること。
◆描写
 S市支部。今、キミは霧谷雄吾の前で今回の事件の顛末を報告していた。
▼セリフ:霧谷
「今回の事件、本当にごくろうさまでした」
「しかし、エージェントの中に内通者がいるとは……まったく、私の目もまだまだ甘いようですね」
「ところで……あなたが望むのならばこの支部に残ることができますがどうしますか?」
「この支部の復興も大事な任務の一つです。有能な人材でなければ勤まりません」
◆結末
 そして、キミの選んだ答えは……。

●シーン14:別れ
(シーンプレイヤー:PC2)
◆解説
 PC2のエンディング。雄介からの手紙が届く。
◆描写
 まるで、何か胸の中に隙間の開いたような、そんな気持ちに囚われながらキミは日々を過ごしていた。
 そんな中、キミに一枚の手紙が届いた。宛名は高梨雄介。
▼セリフ:雄介の手紙
「俺は文章というのが嫌いなので簡潔にまとめたいと思う」
「お前がこれを読む頃、俺はもういないだろうが……妹は無事だろうか? そうだったらこれほど嬉しいことはない。もし、無事でないのであってもお前のせいじゃない、気に病む必要はないぞ」
「お前がどう思っているか分からないが、俺は自分の決断に悔いはない。やれることをやっただけだ」
「ただ……あの時、俺とお前の道が二手に分かれてしまった、それだけのことなんだろう」
「あー、なんだ。悔いはないと先に書いたが……ありゃ、嘘だな。……あいつを海に連れて行けなかったことだけが後悔と言えば後悔だ」
「よかったら、お前が連れて行ってやってくれ。あいつと、そしてあいつの選んだ少年の二人でもつれてな」
「書いてる俺がこっぱずかしいなってきたからそろそろ終える。」
「(ずいぶんと空白を空けて)……お前とつるんでるのは楽しかったぜ。じゃあな」
◆結末
 いつしか、手紙はいくつもの水滴で濡れ、文字が滲んでいた。キミは手紙をいつまでも強く、強く握り締めていた。

●シーン15:Sweet days / 完結編
(シーンプレイヤー:PC1)
◆解説
 PC1のエンディング。クライマックスで可奈が生きているかどうかによってエンディングの内容が変わる。
 生きている場合は描写1、および結末1へ。
 残念ながら死亡している場合は描写2、および結末2へ。
◆描写1
「ひとりに……なっちゃったなぁ」
 彼女はそう、「へへへ」と笑うと目に涙を溜めながらキミに語りかけた。
▼セリフ:可奈
「お兄ちゃんはいつもそうなの。わたしのこと、全然かまってくれなくて……いつも、ひとりで何でも決めて……」
「ひどいとおもわない? 今日だって、わたしに何も言わないでいなくなっちゃうんだからさ……」
「(泣きじゃくりながら)……サイテーだよ、ホント。そう思わない、PC1クン?」
「でも、私のこと……一番大事に思ってくれたの……」
「そんなお兄ちゃんに、こんな顔見せられないよね?(服のすそで涙をごしごしと拭う)」
「だめだなぁ、わたし。涙が止まらないやぁ……」
◆結末
 子供のように泣きじゃくる彼女をそっと抱きしめながらキミは空を見上げた。
 そこには、雲ひとつない、そんな空があった。

◆描写2
 あの時と同じ場所、同じ雨。
 そんな時、キミはあの路地を通るたびに彼女の姿を探す。
 キミが彼女の笑顔を見ることはもうない。分かっている、分かってはいるが……心がそれを許容出来ない。
 今日も、あの日と同じ雨が降る。
 いつものようにキミがあの路地に向かおうとすると、その途中、原色で彩られたカラフルな傘を二人で分け合う母子の姿が目に映った。女の子の手の中にはあの日助けた猫に良く似た姿の子猫がいた。
▼セリフ:少女
「おかあさん、わたし、ちゃんとえさもあげるよ! まいにち、さんぽだってするんだからね!」
▼セリフ:少女
◆結末2
 女の子は優しげに母親にさとされる。
 母子がキミの横を通り過ぎる、そのとき、子猫は鳴き声をひとつあげた。

■アフタープレイ
 ここで本シナリオは終了となる。
 ルールに従ってアフタープレイを行い、ゲームを終了させること。

*1:このシーン以外、登場することはありません。

*2:シーン終了時にGMは高らかと「では可奈はPC1にロイスを取得します。ポジティブは純愛で(笑)」などと言うと少し場が盛り上がるかも知れない。

*3:シーン中、雄介が発見したのは可奈とPC1である。GMは<知覚>で判定を行なわせてもいいだろう。

*4:この情報項目は最後に調べるように処理すると、GMは楽かも知れません

*5:<リザレクト>の使用を許可すると戦闘が長引くので。もちろん、勝てると判断するのなら使用を許可し、戦闘を続ければ良い